after glow
編集後記01

01ag02





Welcome to the TALEMARKET
おはなしいちばへようこそ

小学生の頃、なりたかったのは小説家でした。
中学生の頃なりたかったのは新聞記者で、高校生の頃なりたかったのは、雑誌記者でした。
今、僕は幸運にも、まったくもって幸運にも、雑誌の編集記者をしています。
10年近くこの仕事をしていますが、取材をしたり、写真を撮ったり、文章を書いたりすることが、とても楽しい。 
以前ある作家と話していて、「今は(書くことが)楽しくても、じきに苦しくなるわよ」と言われたことがあります。
それからもう5年ほど経っていますが、どうも相変わらず楽しいのです。
もちろん、苦しくて辛いことはそれなりに(もしかしたら人一倍)あります。鼻から脳味噌が出るくらい考えて悩んで、知恵熱を出して胃潰瘍になって、肝臓をこわして、腰を痛めて、でも、それでも楽しい。嬉しい。
なぜか----。
今、僕は、仕事で毎月のように全国の農村を訪ね歩いています。
人が生きていく上で欠くべからざる食べ物。それを作り、育てている人達と、たくさん出会うことができます。
この地球にじかに触って仕事をしている彼・彼女達は、とても格好良く、そして美しい(もちろん、そうじゃないような人もいますが)。
これって、とても大事なことじゃないのかなと思います。
確たる美意識とスタイルなくして、真に格好良くも、美しくも、なれはしないのだから。
日本という名前をつけられた南北に長いこの列島で、昔は知らないけれど、今一番欠けていて、そして一番必要なものって、こういう恰好良さとか美しさみたいなものじゃないか、とさえ思うのです。
米欧と肩を並べる必要も、アジアのトップになる必要もありゃしない。世界地図上の極東にある、ちっぽけだけど、とりわけ美しい島----それでいいんじゃないの。
そんなことを、そうとは意識せずに気づかせてくれる人達が、この列島の「地方」と呼ばれているエリアには、たくさんいます。
マスのメディアからこぼれ落ち、端折られた些末なこと----でも実はそんな部分にこそ、物事の本質みたいなものがあるような気がしてなりません。
「tale MARKET」----アジアのどこか片隅にある街の市場のように、雑多で、無秩序で、でも、どこか楽しくて、わくわくして、思わぬ発見があったりする----そんな空間になれたらと願い、この名前をつけました。
この先たくさんの人が、いろんな物を、このステージに持ち寄ってくれることを願っています。

(2003年1月1日発行「TALEMARKET.vol1」編集後記より)




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